専門医の医師の求人/募集/転職スペシャルインタビュー >石井 暎禧 氏 /社会医療法人財団 石心会 川崎幸病院理事長・院長

スペシャルインタビュー
石井 暎禧

すべての患者さんのために。
「断らない救急医療」で地域に貢献

石井 暎禧 氏
社会医療法人財団 石心会 川崎幸病院理事長・院長

昭和48年の開設以来、川崎市幸区を中心に市南部および横浜市北部を診療圏として活動する川崎幸病院。長年にわたり市が苦慮してきた救急対応の問題を解決するべく「断らない救急医療」を実践、2012年4月に川崎市より「重症患者救急対応病院」の指定を受けた。開設40周年を前に新築相成った新病院は、地域医療の中核として今後さらなる期待が寄せられる。社会医療法人財団石心会理事長であり、川崎幸病院院長である石井暎禧氏に話を聞く。

“断らない救急医療”の実践

JR川崎駅西口、11階建ての真新しい建物が市内を見下ろすように堂々と構える。病床数326床、ICU、ACU、SCU、CCU、HCU、重症病床は合わせて49床を数える。従来3室だった手術室はハイブリッドを含め7室に拡大、年間1600症例を超える手術に24時間体制で対応する。各階ごと清潔感に満ちたピカピカの院内に、これら急性期病院の持つべきシステムや医療ユニットが機能的に配置される。
「60床から始めておかげさまで2013年に40周年を迎えることができますが、その年月の中で医療とそれに対する環境はめまぐるしく変わってきました。幸区は人口10万人ほどの小さな区域ですが、私たちの病院の根幹は『地域医療』ですから、たとえ200床であろうと、地域の医療ニーズに対応できなければその使命を果たすことはできません。患者さんがどんな病気であろうと、うちがやらなければならないという使命感の下、体制を作ってきました」
旧病院時代は病床数203床、救急車の受け入れ台数は年間6000件を超えていた。積極的に多くの救急患者を受け入れ、先進医療にも24時間体制で対応してきた。年間の救急車出動台数が50000件に上る川崎市の現状の中、10000件の受け入れを目指して実践してきたのは、すべての患者さんのための「断らない救急医療」だった。

試行錯誤で急性期機能を強化

「私たちの病院は大きくありませんから、現実的に長期の患者さんを受けることができません。急性期に特化せざるを得なかったんです。病床規制でこの辺りは過剰地域になってしまうし、200床の中でこの医療に対応するにはどうしたらいいのか。DPCの前身制度といえるDRG/PPSがアメリカで導入された折に、将来的な導入を見越して視察に行きました。日本はこういう体制でやって初めて急性期病院と言われますが、“ナースインホーム”のアメリカは病院といえば急性期病院です。
地域の医療機関との連携、外来部門の独立、電子カルテの採用、DPCの導入、
退院調整看護師など、試行錯誤を繰り返してきました」
地域医療計画に基づき変化する医療界全体の流れを先に見越し、急性期機能の強化と
充実を図ってきた。過去に、救急対応において全国の政令指定都市の中で3年連続
ワーストワンだった川崎市。深刻な受け入れ問題や経営破綻など、公的な病院といえども
自治体からの補助金だけでは経営が益々困難になってきている時代、市内の近隣病院が
病床稼働率に伸び悩む中、狭いながらも医療体制を整え“実ありき”で同市の救急医療に
貢献してきた自負がある。静かな語り口の中、言葉の端々に自然と熱がこもる。

全科で支える「救急・総合診療部」

「救急・総合診療部」は、先進医療による救命処置はもちろん、軽症患者や他院で断られた患者などに広く開放する。救急専門医が中心となって診療していた従前の「救急部」から、全診療科の全医師が参加する診療科へと体制の変革が成された。これまで市民が持っていた救急対応の不安を解消し、今まで以上の機能と救急医療を実践する。
「分秒を争う命に関わるような病気といえば殆どが脳か心臓、たとえば急性の脳梗塞であればTPA注射適用の判断、急性心筋梗塞であればカテーテル治療。病気の種別、専門分野にこだわらず、慣れている専門医とスタッフが昼夜休日を問わず何でもできる体制が求められます。病院で総合診療といえば救急なんです。診療所やクリニックで言うところの、いわゆる在宅医療の柱としての総合診療とは違います」
救急医不足の中、誰が救急患者を診るのか。先進医療技術は益々専門分化され、今まで以上に医師のトレーニングが必要となる一方で、基礎的な総合診療ができなくなっていることが救急医療においての問題点と指摘する。「救急」「総合診療」と併せ、一括したシステムで医師の育成にも取り組む。
「医者として基本的な知識を持つことは重要です。一般の救急専門でも、自分の専門以外の領域になるとわからない。少々の傷なら診ることができて、気道確保くらいはできなければいけないんです。頭痛であれば脳外科的か内科的か、どのような痛みでCTはどのようなオーダーを出せばいいのか、タイミングと状態を見た的確な判断が求められます。私たちは各医師の能力を把握した上で指導医をつけて教育し、救急の現場で即戦力になるような体制づくりに意識的に取り組んでいます」

将来の医療界を見据えて

「良質かつ適切な医療を効率的に提供する」-。地域医療計画に基づいた体制整備と共に
懸念される将来の社会像、いわゆる「2025年問題」など、やがては訪れる医師、
看護師が少ない人数で増える患者を診ていかなければならない時代。
国が様々な対応策を練る中、国民の関心は今まで以上に寄せられている。
「高齢化に伴い、国民が今まで以上に自身の健康や医療に関心を持つようになっています。
疾病構造の変化、様々な職種がさらに増え、医療の高度化と専門化は益々進んでいくで
しょう。
第5次改正に盛り込まれた、4疾病5事業に対する医療機関の機能分化と連携は大きかったと
思います。厚生労働省が把握するこれらのデータを合わせれば、どこの病院がどういう
体制を整えているかある程度の事はわかる。しかも情報公開されたことで全てが手に入るし、最近はインターネットや雑誌などにもいろいろ解析された情報がランキング形式で掲載されていますが、医者も患者さんもそれらを見て『ここの病院はいいらしい』『こういう患者を多く診ている』と判断しているわけです。病院毎の機能はすでにわかり始めている、現実は先に進んでいるということです」

進めざるを得ない“機能分担と集積”

弊社代表・徳武と石井先生
弊社代表・徳武と石井先生

「誰もが手一杯になったときのことを考えると、私たちなりに取り組んでいかなければなりません。どこかに特化しなければならないということではなく、各々の病院が地域の中で必要なこと、自分のところはここが強いという事をしっかりやる体制を構築していく他ないと思います。日本全体の財政事情もありますし、病院も効率的な啓蒙をやらなければなりません。その中で医者、看護師はその専門性を目一杯活かして働いてもらう。たとえば高度医療を要する大手術であれば、対応できる病院一箇所に集めて手術室の効率性を上げる。機能分担と集積ですね、これ以外に今後の日本の医療は成り立てない、ということで私たちは必死なんです。特に急性期の領域においては進めざるを得ません。今、厚生労働省は急性期病院に関してはスタッフが2倍くらい必要だと言われていますが、ここは昔から狭いところに医者も看護師もたくさんいたので、すでにそのような体制になっていましたよ。これからは医者も看護師も、チームで相当な人数がいなければならない。そうすると患者がいないとこれが成り立たない。そうなると、やはりこれは集積せざるを得ないでしょう。この川崎の現況を捉え、私たちは非常に強く感じています」

専用のエレベーターで運ばれてきた老年の男性患者を救急スタッフが取り囲む。無駄のない動きと迅速な対応で処置に当たる一人ずつの思いがERを包み込む。「受け入れ要請は決して断らない」-。今日もまた、その使命感の下に全スタッフが一丸となって取り組む姿に、氏の熱意ある視線が注がれる。


石井 暎禧 氏 (社会医療法人財団 石心会 川崎幸病院理事長・院長)

プロフィール

1962年 東京大学医学部医学科卒業 
1963年 東京大学付属病院産婦人科へ入局 
1973年 医療法人財団石心会の設立に参画、川崎幸病院長に就任 
1974年 医療法人財団石心会理事長に就任 
1990年 狭山病院院長を兼務 
2005年 狭山病院院長を退任 
2007年 川崎幸病院長を兼務 

社団法人日本病院会 常任理事、医療制度委員会委員長
日本診療録管理学会 理事
日本病院団体協議会 診療報酬実務者会議委員
厚生労働省 元中央社会保険医療協議会委員

(取材・文/江崎龍太:各種インタビュー記事始め、ジャンルを問わず幅広い分野で活動中。「専門医局」は2011年10月より執筆)

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壁谷 悠介 氏/そうわクリニック院長

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佐藤 理仁 氏/さとう埼玉リウマチクリニック院長

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小林 奈々 氏/医療法人めぐみ会 自由が丘メディカルプラザ副院長

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小川 奈津希 氏/ジェネラルクリニック院長

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久保田 明子 氏/アイクリニック自由が丘

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煎本 正博 氏/株式会社イリモトメディカル

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吉田 正史 氏/東埼玉総合病院 消化器内科科長・内視鏡室室長

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武田 淳史 氏/公益財団法人 東京都保健医療公社 豊島病院 眼科医長

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